閉山後の富士登山について
子連れで富士山に登ろうシリーズですが、とりあえず完結します。
一応、誤解がないように富士山の開山閉山のお話を先にしておくと、富士山の開山期間は7月上旬から9月上旬で、それ以降山頂への登山道は通行止めとなります。
ですが、これは観光登山やレジャー登山などの軽い気持ちで登る人を制止する意味であって、登山者を拒絶するものではありません。また、一般的に9月から10月くらいは絶好の登山時期です。富士山だと降雪が始まるので天候や気温を見ながらになりますが、天候がよければ非常に登りやすく気持ちが良いです。
ガイドラインにもある通り、
・万全な準備をしない登山者の夏山期間以外の登山「禁止」←これが重要!
・夏山期間以外については、「登山計画書」を必ず作成・提出すること
・山中のトイレが使用できない夏山期間以外において、万全な準備をした登山者が登山を行う場合、携帯トイレを持参して、自らの排泄物を回収し、持ち帰ること
です。
ガイドラインをしっかり読んでもらえば分かりますが、「夏山期間以外の時期は充分な技術・経験・知識としっかりとした装備・計画を持った者の登山を妨げるものではないが、・・・」とあるので、富士山だから登りたいと言うのではなく、普段からいろんな山を登っていて知識や経験、充分な装備があれば登れます。
また、9月末くらいまではいくつかの山小屋は営業しているので、”閉山したのに登っている”とか、”通行止めなのに通り抜けた”などの批判をすると山小屋の営業に迷惑をかけるので慎みましょう。
通行止めの看板も立ててありますが、人が通れるように横によせてあるので、登山者は通行止めの看板の横を通るのが通常なのです。
ちなみに私が知っている閉山後に営業している山小屋は
吉田ルートだと、佐藤小屋(通年営業)
富士宮ルートだと、雲海荘(9月下旬まで)
須走ルートだと、瀬戸館(9月末)大陽館(10月中旬くらい?)
と、いくつかあるので9月末くらいまでは山小屋泊での登山も可能です。
富士登山
装備
大人1人、小学生3人分です。
・水分
2Lのお茶、500mlの水×2、500mlのお茶を持って登山。
山小屋で500mlの水×2を補充。
山小屋泊で夕食時にお水が飲めて、日の出前にお茶を入れていただきました。
普通なら充分な量です。今回は下山に手間取り水分はなんとか持ちこたえた感じです。でも、足りました。
・食料
夕食は山小屋でカレー。量は充分。
菓子パンを6個ほど手持ちで登りました。これは余りました。朝食用と予備で持っていきましたがそこまで食べないっぽいです。
行動食として、カロリーメイト3箱、ピーナッツ大袋×3、ラムネ3個。これもピーナッツは大量に余り、カロリーメイトは半箱分余り。ラムネはほぼ食べきりました。
その他すれ違う人たちから子どもたちにチョコやら飴やらをいただきました。
・服装(防寒対策)
子どもは半袖、長袖の服。冬用ジャンバー、ベスト。ネックウォーマー。スポーツタオル(首に巻いて空気を遮断するため)、バスタオル(汗拭き用ではなく体に巻いて温める用)
私は長袖シャツ、バッテリー式ベスト(これは子ども低体温になったときに温める用ですが、重いので普段は私が着て運びました)、冬用ジャンバー。
これで充分足りました。スポーツタオルとバスタオルは結局使わずに下山できました。登りは暑すぎて半袖で充分でした。
・その他
キッチンペーパーとビニール袋を多数。これは簡易トイレ用です。市販の登山用簡易トイレを持って行っても良いのですが、嵩張るのと他に利用できないので汎用性を重視してキッチンペーパーとビニール袋を簡易トイレとして持っていきました。
紙地図は忘れたので、携帯にスクショした地図。
携帯用小型ライト。念のため日没や夜間に備えておきます。
・登山計画書
登山計画書は登山口ではなくアプリを使いました。紙媒体だと届け先が登山ルートごとに違うのでガイドラインを参考にしてください。
どの登山ルートでも、登山計画書の届け先としてオンライン登山計画書「コンパス(Compass)」が指定されているので、こちらの方が便利です。
初日登山開始
須走口5合目 → 本6合目 3時間25分
朝は起きて準備して出発。8時過ぎくらいに家を出て、途中の駿河SAで休憩。伊豆半島を眺めて「また行きたいね」って。その後、新東名の新御殿場ICから須走口を目指すも思いのほか大渋滞。行楽日和で富士五胡周辺が渋滞していたのかも。最後のコンビニで食料調達してあざみラインを登り須走口5合目駐車場に到着。
12時くらいに着けば良いなと思っていましたが、13時過ぎてしまい登り始めは13時半でした。
駐車場は驚くほど混んでいて満車ではないものの数台分の空きがあるくらいでした。須走口5合目は人がそれなりにいて賑わいを感じました。「帰りにソフトクリームでも食べようか?」なんて言いながら通り過ぎ登山開始。
13:30 須走口5合目出発
最初は山の中って感じです。富士山とは言え須走口だと木々が生えている中を歩きます。なので山の全景は分からないし、山頂や途中の小屋は見えません。
この日はゆっくりペースで充分なのでそのことを伝え、ゆっくり登っていきます。本6合目の瀬戸館で宿泊なので時間的には余裕です。次の日の方が大変かなぁと。
15:55 6合目の長田山荘で一休み。小屋は閉じています。ベンチに座って少し休憩。
6合目を超えると景色が開けてきて山頂が見えます。山頂が見えたときの子どもたちのテンションの上がり具合は素敵です。また、小屋が点々と見えるので”ここを明日は登るんだ”と気合が入ります。
16:55 瀬戸館到着。
宿泊予定の瀬戸館に到着。小屋に入るとすぐに名前で呼んでもらえました。宿泊客が少ないのか、3人の子連れが珍しいのか。
宿泊の案内があって子どもたちは初めての山小屋に大はしゃぎ。寝袋にも興奮。外に出て雲海を見下ろしまた興奮。
夕食は17:30にしてもらいました。私は子どもの食べ残しを心配して素泊まりにしましたが子どもでも食べきれる量だと聞いて私の分も夕食を追加。しかし、3人とも食べ残したため私はお腹いっぱいできつかった。登山中の食べすぎは危ないよ。
この日は宿泊客が少なく、もうひとつ上の7合目の大陽館が営業しているので少しでも上で泊まる人が多いみたいでした。個人的にはあまり標高を上げると高山病が心配なのがあるので、標高3000mを下回るところが良かったことと、宿泊が少ないことで静かにゆっくり休めて良かったです。また、子どもが騒がしくなるのを抑えるのも大変なので。
ちなみに標高は瀬戸館は2700mで、大陽館は2960mです。
夕食後の外に出ると夜景がきれいでした。街の明かりを山から見るのってきれいですね。下の子が今回お留守番になった一番下に「この景色を見せてあげたい」って言っていて優しい子だなぁと
20:30には就寝ですが、たぶん20時前には布団でゴロゴロし始めて寝ていました。歩いたせいもあって寝始めは暑く服を脱ぎました。夜中に寒くなって毛布を被ります。寝袋のファスナーを締め切ると非常に暖かいのでファスナーの開け閉めでも調節できます。
2日目は登頂から下山
本6合目 → 山頂 7時間15分
朝起きるとまだ日の出前。トイレに行ってもう一度寝てました。私たち以外の宿泊客はすでにみなさん出発していました。
5時くらいに子どもたちと起き始め、5:30のご来光を山小屋のベンチから眺めました。日の出を見るのも子どもたちは初めてです。
日の出を堪能したら出発の準備をして、山頂を目指します。
下の子と登っているといろんな人が声をかけてくれます。本8合目まではそれなりに順調でしたが、そこから9合目までで一気にペースダウンします。この辺りは小屋が連なって見えるのでテンポよく登れそうなんですが下の子にはきついらしい。
本8合目を越えて、上の子ふたりに先に登頂して良いと言いました。分岐がないこと、山頂まで見通せていること、下の子の遅れ方が激しく待ち時間で消耗することを避けたかった。
上の子たちはけっこうあっさりと山頂に到着。かなり待つことに。
下の子は9合目を越えるくらいから泣き始め、酸素の薄さに苦戦しているみたいでした。歩くたびに息が上がり、呼吸は整うが歩き始めるとすぐに苦しくなる。
諦めちゃだめだよってことを話すと、「分かってる。行きたい。でも、体が動かない」そうです。高山病とか人それぞれだけど、きっと気持ちとかではなくて本当に体が動かないのだね。
かく言う私も前日から子どもの荷物も持って登り、一番下にペースを合わせ消耗も激しく、このころは時々立ち眩みやふらつきがありました。子どもに弱みは見せられないので倒れるわけにはいかなかったけど、かなりきつかった。
13:00頃 山頂に到着。
本当に最後は苦しみながら登頂に成功しました。そのまま一番下はベンチに倒れ込み起き上がれず。
上のふたりは1時間以上も前に到着し元気いっぱい。真ん中の子は30分くらい寝てたそうです。
少し休憩してすぐに下山。ちょっとタイム的に心配になってきました。でも、まだ大丈夫かな?ってこのときは甘い考えをしていました。
山頂 → 須走口5合目 8時間30分
記念写真を何枚か撮ってすぐに下山します。降りることで酸素も増えるし楽になるはずです。本8合目くらいまで下りるとけっこう酸素も楽になるはずなんですが違いました。
一番下が泣き始めます。心拍数が落ち着かない。息が上がったまま下がってこない。9合目を過ぎると落ち着くかと思いましたが、なかなか戻ってこないみたいです。ペースも落ちたまま戻ってこないので危ないなぁと。
上の子たちも回復させながら歩いたいので、分岐までは先行して良いよと言って、少し先を歩かせます。酸素の薄さから解放しないといけないので。
この辺りから私にも異変が。一番下の体力や水分やエネルギー補給を気にしすぎて自分を疎かにしてしまいました。エネルギー不足で体が温められず震え始めます。慌てて栄養補給。少し体力的なキツさを感じます。
なんとか8合目の分岐から下山道に入りますが、砂地が意外と厳しい。子どもにとって砂地は余計に体力を使うみたいです。足の大部分が埋もれてしまうし、砂が足に絡まるので。
すでに時間の心配はしていましたが、相当厳しいと感じていました。それでも日没には大丈夫だろうと思っていました。
本7合目付近で最後の下山者にあいました。話しかけてくれて、「大丈夫ですか?」と。私にもまだ余裕があったので「何とか下ります」と。
それでも、しばらく一緒に下山をしてくれて、「私にできることはありますか?」とか「上の子ふたりを先に下ろしましょうか」とか言ってくれて非常に有難い思いでした。しかし先に下山しても待たせることになるし、とりあえず自分たちはかたまって下山する選択を取ります。
かなり遅れていたので私がいろいろ連絡を取っているとうちの子どもが近づいてきて、「さっきのお兄さんヘッドライトをくれた」って。「5合目で会えたら返してね」って。「会えなかったら仕方ないね」って。
本当に感謝に堪えません。このときちょっとウルウル来てしまいました。
ここから頑張って下りますが日没になり山小屋を通り過ぎるとなんと大陽館。まだ7合目。これはヤバい。
子どもたちを無事下山させないといけないのに私が力尽き、下の子も時々動きが止まる。
とにかく砂地がきつい。日が暮れてしまい上の子が不安がります。怖いから速く下りたいその一心で歩くも、みんなが止まる。これがチーム登山の難点。一番遅い人に合わせるしかない。これが引率者がふたりなら、先行集団を作れるけど、今はとにかくかたまって下りるしかない。
長い長い砂地を越え、森に入ると上の子は安心したみたい。「これで帰れる。歩けば帰れる」って。この後はみんな交互に止まるとみんなでしゃがみ込み、誰かが「行こう」と声をかける。下の子もなぜか回復してきたみたいで、同じペースで歩けるくらいに回復していた。最後は先頭を歩いていました。
最後に祠の壁が見えて、私が「あれが入り口じゃない?」と。ようやく須走口5合目に到着。
途中の動物の鳴き声も怖かったけど、この時間に人がいたのもちょっと怖かった。ヘッドライトを付けた人が「Can you speak English?」って。「No,Sorry」と言ったんだけど、山頂まで行ったの?的なことを聞かれ、昨日は山小屋で今日山頂まで行ったよと。下の子を見て、「Oh,kids」って驚いていた。
5合目から駐車場までが登りで遠く感じたのと、駐車場に車が1台もない。これは驚いた。
何が起きたかと言うと、来たときはほぼ満車で気づかなかったけど、駐車場が広くて、奥の端にとめた自分の車を見つけれなかっただけ。しかもこのとき2台しか止まっていなかった。
車に着いて時間を見ると21:45
5:45に出発したから1日の行動時間16時間。子どもにはきつかっただろうなぁ。ほんとごめん。そしてありがとう。趣味に付き合ってくれて。
これにて富士登山終了。
ありがとうございました。
さいごに
これから富士登山をされる方へ
登山の標準登山時間は気にしない方が良いです。人によって相当変わります。
いくつかいろんな山を登ってみて、自分の歩くペースや行動時間の限界などを把握しておくとよいでしょう。
一応、子連れのときは標準タイム×1.2~1.3で休憩込みだと×1.5を見ています。今回は登りで×1.5でしたが、下りが砂地に足を取られて子どもにはきついルートであったこと、長時間行動で体力を奪われたこともあって、×2を大幅に超えました。これは想定外です。
須走はそこそこ登山に慣れていないと登らないルートなので甘く見ると痛い目にあいます。登山経験が少なかったり体力に自信がない人は、大人でも下りで5~6時間は見ておいた方が良いでしょう。私たちみたいに子連れで下りに難儀して大幅に遅れるとペースの落ち方も極端に落ちます。
また、大人なら歩けても、子ども連れで行動時間が10時間を超えると足が遅くなります。休まないと動けないこともあります。12時間は超えないようにした方が良いです。
私たちが無事に帰れたのは、今までの様々な登山経験と折れない気持ち、いろんな人たちのやさしさと支え、そして子どもたち頑張りです。
補足しておきますが、上の子たちだけだと山頂までに1時間以上も時間を節約できて、日が暮れまでに下りきってと思われます。たぶん2~3時間は行動時間を減らせてます。
子連れの方はご参考に。
登山に関わる全ての人へ
ここまで富士山を含めいろんな山を子連れで登ってきましたが、みんな優しいです。本当に優しいです。
富士山では下の子にすれ違う人や追い越す人が声をかけてくれました。「頑張っているな」とチョコをくれた人。「歩けばちゃんとつくから」と話しかけてくれた人。
下山中は先行する上の子たちに話しかけて、私たちに「下にいるの娘さんたちですか?」と声をかけていただきました。単純に話しかけてくれたのではなくて、子どもたちだけではぐれていないか心配してくださったのですね。
「大丈夫ですか?お水とか足りていますか?」と山では貴重な水を分けてくれようとしたり。過去の登山でも何度かいただいたことがありますが本当に感謝しています。
富士登山では水と食料と防寒対策だけは万全にしていたのでお気持ちだけいただきました。
私の知らないところで、先行する子どもたちが飴やらいただいたそうでありがとうございました。外国の方にも話しかけられて「たぶん山楽しい?」って聞かれたって喜んでいました。
ヘッドライトを貸していただいた方には返せずに申し訳ありませんでした。子どもたちと無事下山できたのもあなたのおかげです。ありがとうございます。
富士登山でもものすごく多くの人に話しかけられました。みんな仲間です。子連れでないときは私も助ける立場になりたいと思います。子連れのときはまず自分と子どもたちがしっかり登山できるように専念します。
山に関わる全ての方へ。本当にいつも助けていただきありがとうございます。子どもたちも山の人は優しいと言っています。きっと良い大人に育っていきます。すべてみなさんのおかげです。ありがとうございます。
SGYライフ&ホーム(名古屋市守山区) 代表
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